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インスタントリプレイ

野球というのは人間のやるスポーツであり、その判定をする審判も人間なのだから、いくらプロだとはいえミスは付き物であります。打者は10打席中3回ヒットを打てば好打者だと言われますが、7回は失敗をしている訳です。

 

しかしながら審判は的確な判定をするのを当たり前だと思われています。少しでもミスをすれば、その審判はヘタクソだと言われるのが現実です。プロは特に厳しく、ミスがあれば選手や監督からもの凄い勢いで抗議を受けます。

 

昨年まではホームラン性の打球がフェンスを越したか、ホームランポールのどちら側を通ったかということを審判の判断でビデオ判定でレビューする事が許されていました。確かに人間の肉眼では内野にいる審判からフェンス際の打球の確実な判定は難しいので反対する人は少なかったのではないかと思います。

 

しかしながら今シーズンからはそのビデオ判定が出来るプレーの範囲が大幅に広がりました。メジャーリーグではそのビデオ判定を「Instant Replay」といいます。試合開始から6回裏の3アウト後までに両チームの監督にチャレンジ(ビデオ判定)する権利があります。一度目のチャレンジを成功すれば二度目のチャレンジをする権利があるのですが、もし一度目で失敗してしまうとその監督にはもうチャレンジする権利が無くなってしまいます。7回以降は審判の判断でいつでもビデオ判定が出来ます。ビデオ判定はニューヨークにあるビデオ判定ルームで審判団が判定します。

 

ビデオ判定が認められるプレーは限られており、ストライクとボールの判定と内野のフェアとファールの判定はする事が出来ません。

 

ここまでは良いのですが、このビデオ判定で審判が不利だと思うことがあります。両チームのダグアウト裏(クラブハウス)にはビデオ判定分析専用ビデオルームが設置されており、各チームのリプレイ担当のスタッフが特殊なハイスピードカメラを使って中継されているビデオをスローモーションで繰り返し観る事が出来ます。各チームの監督は、ビデオルームでビデオ解析しているスタッフと設置された電話で連絡を取り合う事が出来ます。際どい判定が下されたとき、監督は抗議がある様な仕草を見せながら審判へ向かってゆっくり歩いていき、審判に抗議をしながらベンチからの指示を待ちます。その時間を使ってスタッフがビデオを解析し、電話を通してベンチに指示を出し、ベンチから監督に合図を出し、チャレンジの有無を決定します。

 

また、球場の巨大スクリーンでは何度もプレーをスローモーションで再生する事が認められ、ベンチにいる選手、コーチ、そしてスタンドにいるファン全員がその映像を観られる様になりました。

 

フィールドには約15台のカメラが色々な角度から設置されており、どのアングルからもスローモーションでプレーを解析する事が出来る様になっています。

 

 

なので、審判にとっては完全に不利な訳です。

 

ちなみに今年採用されたインスタントリプレイですが、一番初めに適用したのがシカゴカブスで、リプレイを担当しているのが私の最も尊敬する先輩のうちの一人である、同じ日本人の正本さんです。なので、メジャーリーグで最初のビデオ判定は日本人の手によって適用され、そして成功したことになります!今度許可をとって、正本さんについて書きたいと思っています。

 

最後に、もしチャレンジをするかしないかをベンチにいる監督が肉眼で観て決めるのであれば、お互いに平等なルールだと思います。しかしチーム側はハイスピードのビデオを使って解析出来るのは審判にとって凄く不利な事です。今年一年の結果でまた来年のルールは決まってくるとは思いますが、さすがに今のままでは審判の方々に気の毒であります。

 

 

ウィスコンシン州ミルウォーキーより、

 

植松泰良

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