アメリカ野球での暗黙の了解
アメリカで野球に関わってもう10年以上になりますが、試合中に日本では経験の無い、おかしな決まり事があります。アメリカでは何か良い事が続いているときにその事実を口にすると、不運を寄せ付け、続いている事が止まってしまうという、ゲン担ぎみたいな習慣があります。例えば、健康の話をしていて、「私は大きな風邪は一度もひいたことがない」と言ったとしましょう。言った本人は言った後に「言ってしまったから大きな風邪をひいてしまうかも」と心配になり、それを解消するために木でできた壁やテーブルなどを数回ノックします。「knock on wood(木を叩く)」と言って、言ってしまって呼び込んでしまう可能性のある不運を追い払う儀式です。
私は普段の生活ではそれを逆に全く信じず、口にする事によって幸運を引き寄せるという事を信じています。しかし野球のときだけは何故かそのゲン担ぎを信じてしまっています。試合中に自分のチームの先発ピッチャーが完全試合やノーヒットノーランをやっている時、それを絶対に口にしてはいけないという決まりがあります。口にしてしまったら不運を招き、ノーヒットノーランが止まってしまうと皆んな恐れているからです。監督、選手、コーチ、トレーナーなど誰一人として口にしませんし、テレビの実況のアナウンサーさえもそれを口にしないという暗黙の了解が存在します。
この習慣は日本の野球では聞いた事がありませんがどうなのでしょうか?
コロラド州デンバーより
植松泰良