キャッチングで意識していること
数日前、私のブログを読んでくれている方からメッセージをいただき、「キャッチングで一番大切にしている事は何か?」という質問を頂きました。直接メールで返信しましたが、ここでも書きたいと思います。
まずキャッチングで一番大切にしているのは、来た球をキャッチャーミットの芯で捕るということです。芯で捕れば良い音が出るし、ピッチャーの気分も良くすると思います。一昨日、ある新聞社の取材で同じ質問を受けましたが、やはり私の答えは芯で捕るでしたが、ミットを閉じる時に、早く閉じすぎたらミットの淵や芯以外の部分に当たって、芯に入る前にボールの勢いが死んでしまい、良い音が鳴りません。しかし勢いのあるボールを直接芯で捕ることが出来れば、ピッチャーの気持ちを乗せられる様な良い音がなります。メジャーやマイナーリーグで投げるピッチャーたちは手元で動く様なストレートを意識して投げるので、日本人の素直な手元で伸びてくる様なストレートと違い、ミットの芯で直接捕るというのは本当に難しいことです。しかしそこを追求していくのがプロの野球で仕事を頂いている以上追求していかなければなりません。
では、手元で変化するボールを良い音を鳴らすためにミットの芯で捕るコツは何でしょうか?日本では高校野球までしか経験したことはありませんが、常にコーチに言われていたことは、「前で捕れ」です。前で捕るということは、出来るだけ手を伸ばしてピッチャーにより近い所でボールを捕るという意味だとずっと勘違いしてプレーしてきました。打者の手元で変化する様なボールを前に捕りにいってしまうと、最後までボールの変化を見ることが出来ないし、眼から遠い所の動きというのははっきりと見ることは難しいのです。
ナックルボールという魔球と言われる変化球を見たことはありますでしょうか?メジャーリーグでもブルージェイズのRAディッキー投手がナックルボーラーとして有名ですが、ナックルボール投手には専属捕手がつかなければならない程、捕るのが難しいと言われています。ナックルボールというのはほぼ無回転で、重力や空気抵抗によって、常に何処に変化するかわからない変化球です。他の変化球はどちらの方向に変化するかどうかわかっているので捕るの簡単ですが、ナックルボールに関しては、何処に変化するかわからないし、上に伸びていくことだってあります。ナックルボールを受けるキャッチャーは、規格内で一番大きいキャッチャーミットを使って、最後まで変化をしっかりと最後まで見られるように、体の近くで捕ることを意識します。球が揺れて来ることもありますし、急に思っても無いような方向に曲がっていくこともあります。
なので、ボールを最後まで見るためにも体の「前」で、捕ることを意識しなければなりません。また、試合でプレーするキャッチャーは捕ったときにミットをそこでしっかりと止めなければなりません。特に際どい所で捕った後にミットが流れてしまえば、審判にはボールと見なされることもあります。では、手を伸ばして捕った時と、体の近くで腕を曲げて捕った時ではどちらの方が腕がボールの勢いに負けずにその場でミットを止めることが出来るでしょうか?腕を真っ直ぐ伸ばして、誰かに上から下に力を加えてもらうのと、腕を曲げた時で比べてみればわかると思いますが、曲げた時の方が力に負けずらいのです。
上で述べた二つの理由から、「前で捕る」というのは、体の前、出来るだけ正面で、近くで捕るという意味なのです。腕を伸ばして体の遠くで捕っているキャッチャーを日本では多く見かけますが、遠くで捕って得する事は何も無いと思います。
ブルペンキャッチャーとしては私のキャッチングの大切にしていることは今上で述べたことです。これを高校時代から意識してできていたらと考える今日この頃です。
カリフォルニア州サンディエゴより、
植松泰良