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商売道具

217434_3747271218831_684226247_n何の仕事をしていても、何か道具を使っていると思います。ビジネスマンの方だったら、パソコン、ペン、鞄。マッサージ師の方だったらマッサージテーブル。指揮者の方だったら指揮棒。車のレーサーの方はその車やヘルメット。野球選手はバット、グローブ、バッティング手袋。

 

商売道具にはこだわりがあると思います。その道具を使って自分の商売をするわけですから、こだわらないわけにはいかないですよね。ここがこうだと使いにくいだとか、この形だとしっくり来ないとかそういった感覚は誰にでもあるのではないでしょうか。自分に最高に合った、使いやすい道具を見つけられたときはかなり嬉しいですよね。

 

私はブルペンキャッチャーという仕事をしているわけですが、キャッチャーミットにはこだわっているつもりです。毎年二つずつ新しくします。春のキャンプからシーズンを通して使うと、一つでは足りないので二つにしています。キャンプ前に日本で少しずつ使うようにして、キャンプインの時にはボールが捕れるくらいまで慣らしていくのが理想ですが、実際は出来ていません。。

 

キャッチャーミットは毎年、最高のものを作って頂いています。高校の頃からお世話になっている佐川さんという職人さんが私の商売道具を作ってくれています。高校の頃作って頂いたミットと今のミットを比べると、だいぶ変わった気がします。もちろん技術も上がって、捕り方が変わったのもあって変わってきたのだと思います。3、4年前くらいから、今の形に定着して、型紙を置いてもらって、毎年同じようなミットを作って頂いています。その年に使ったミットを持っていって、何処を変えてほしいだとか、ここは前の形に戻したいとか、贅沢をさせて頂いています。いつも本当に使いやすい、そしてカッコイイミットを作って頂いている佐川さんを初め、職人さん達には本当に感謝しております。

 

小さい頃から、特にグローブを大切にするように父から教育されたと思います。少年野球は毎週土、日曜日だけでしたが、練習の後、家に帰ってすぐにグローブの手入れをしました。グローブは本当に自分の宝物であったので、大切にしてきました。それは中学にいっても、高校に行っても、そして今に至っても変わることはありません。不思議な事に、道具をいつも大切にしていると、いざという時に道具が助けてくれる事だってあると信じています。グローブも人間と一緒で、大切にしてくれる人にはちゃんと働いてあげようと思っているのではないでしょうか。

 

小学校5年生の時だったと思います。いつも友達と暗くなるまで、近くの公立高校のサッカー場で野球をして遊びました。私は小さな頃からテレビゲームなどにはあまり興味がなかったので、友達を無理矢理誘ってでもどうにか野球をしていました。ある夜、野球を終えて家に帰り、お風呂に入り、夕食を済ませ、ぼーっとしている時にふと気づきました、「あれ、グローブがない。」焦りました。本当に焦りました。窓の外を見ると、雨が降っていました。

 

父親にその事を話すと、「捕って来なさい。新しいのは買わない。」

もし無くなったらもう大好きな野球が出来なくなるのかと思い本当に焦りました。母に相談して、一緒に近くの高校のサッカー場に探しにいったら、運良くありました。しかしびしょ濡れでした。毎日丁寧に手入れをしていたので、ショックでした。新しいのが欲しいと、びしょ濡れになったグローグを見て何度も思いましたが、そんな事は以ての外でした。日陰干しして、数日後、乾いたグローブをまた一生懸命手入れしたことを今でも覚えています。

 

その経験から、グローブを何処かに置いてきたりする事は無くなりました。道具を大切にしなければならない事も学ぶ事が出来ました。

 

アメリカではグローブを手入れするという習慣がありません。グローブ専用のオイルというのもあまり見かけた事がありません。選手達がたまにワセリンみたいなのをグローブの内側に塗って革を保湿させようとしているのを見かけます。マイナーリーグ時代の話ですが、ある試合後に、一人の選手が息子をクラブハウスに連れてきて、その子は自分がミットの手入れをしているところを不思議そうにじっと見ていました。「あの人何でグローブを奇麗にしているの?」お父さんに聞いていました。お父さんは、「何か作業をしたあとに、トイレに行って手を洗うだろ?手を使ったら奇麗に洗うのと一緒で、グローブも使ったら奇麗にするんだよ。」と息子に言っていました。その子は恐らくもう野球をやる年になっていると思いますが、その時にお父さんから教わったことを覚えていて欲しいなと思います。

 

この仕事をあと何年続けられるか、そして何個のキャッチャーミットを新調するかはわかりませんが、これからも自分の商売道具は常に大切にしていこうと思った今日でした。

 

 

コロラド州デンバーより、

 

植松泰良

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